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財布から考える、主体性のある生き方|心理学プロスペクト理論とカウンセリング

keyword:プロスペクト理論、生きる主体性、断捨離

突然ですが、皆様お財布はどんなのを使っていますか?

私はちょっと前までいわゆる「長財布」を使っていました。

が、自転車通勤ということもあって、ずっと小さな財布を探していました。

(自転車通勤だと、バックパックに荷物を入れるのですが、少しでも小さく、軽量化をしたいものなのです)

この度、ついに希望に合う小さな財布を発見して使用しているのですが、すると色々と不思議なことに気づきました

それは、一言で言うと「人生の主体性」に尽きるのではないかと思い至り、またカウンセリングとも関係が深いところがあると感じ、臨床心理士として是非取り上げねばと思った次第です。(大袈裟かもしれませんが)

というわけで、本日のコラムは「お財布と人生の主体性の心理学」です。

 


財布の中身の不要物

お財布の中身って何が入ってます?

お札、小銭、カード類、+α(お守りとか入れている人も)ではないでしょうか?

左が今までの長財布(汚くてすみません)

真ん中がiPhone6(画面にカメラで撮っているのが映っているのは気にしないでください)

右が新型財布で、かなりの小型化になっています。

小型化のためには断捨離が必要不可欠です。

というわけで、断捨離開始。

 

もともとの金額の高い品物のポイントは、アプリを入れることによってカードを断捨離(ビックカ〇ラさんとか)。

半年に1度くらいしか行かないところも断捨離(どう計算しても貯まるわけがない)。

病院の診察券って、保険証あれば別にいらないんじゃ…?などと思い、断捨離。

銀行のWebカードも、今はログインとパスワードによるワンタイムパスワードなので、ダイレクトバンキングなどは家のカード入れにいることによって断捨離。

スーツ買う時はあるけど、そんなに頻回に買わないので洋服の〇山さんや、A〇KIさん、コ〇カさんなども断捨離。

1年以上行っていないお店も(期限切れているのも含めて)全部断捨離。

クレジットカード機能付きのも全部解約して断捨離。

お札の一部をSuicaにチャージすることによって断捨離(コンビニはSuicaで十分かつお釣りなくスマート)。

貯まったレシートも、領収証を入力保管した上で不要なものは断捨離。

 

その結果…

入っているものは、日常使うお札、小銭、キャッシュカード、Tカード、クレジットカード、保険証、Suica、領収証宛名用の名刺1枚のみです。

  

つまり、私たちの財布の中は、そのほとんどがカード類ということになります。

私たちは自分で作ったポイントカードやメンバーズカードを「持って」いるのではなく、無自覚に誰かの都合によって「持たされて」いる、とも言えるのではないでしょうか?

お財布とは本来、自分の身の丈の生活に必要な対価(つまりお金)を持ち運ぶためのもののはずです。

すなわち、等身大の自分や自分の生活がそこにあるはずです。

それが誰かの(お店の)都合によって、こんなにも財布のスペースを、ひいては中身である自分を浸食されていると言っても過言ではありません。

 

ここで終わるとただの断捨離の勧めですが、当オフィスはもう少し心理的に考えてみます。 

ではなぜこんなにもポイントカードやメンバーズカードにあふれているのでしょうか…?

 


カードの目的

色々なお店で、色々なカードがありますが、その目的はちょっと考えれば以下の通りではないでしょうか?

①販促

ポイントの還元を謳って再来店の促進。

DMやクーポンによる再来店の促進。

サービス付与(ドリンク無料、施術割引など)による再来店の促進。

上記による顧客の囲い込み

②顧客管理、データベース化

統計データからの戦略

③使用によるロイヤリティ利益等

(クレジットカード)

 

つまり、ポイントカードの類とは、基本的にビジネスの発想に基づいた利益を得るために必要なビジネスツールと言えるわけです。

え? そんなのわかっている?

では、なぜこんなにカードがどんどんたまってしまうのでしょう?

その答えは心理学にあります。

 


利益と損失の行動、プロスペクト理論

突然ですが、次のような2択があったらどちらを選びますか?

 

A:100%の確率で9万円を手に入れられる。

B:90%の確率で10万円を手に入れられる。

 

 

 

 

 

多分、多くの人がAを選びます。

期待値としては、AもBも利益9万円です。

しかし、Bは10%の確率で利益が0円になってしまいます。

この10%のリスクを人は避ける傾向があります。

90%の確率で利益が1万円高くなる可能性があるにも関わらず、です。

 

続いて次の2択であったらどちらを選びますか?

 

C:100%の確率で9万円を損失する。

D:90%の確率で10万円を損失する。

 

 

 

 

 

多分、多くの人がDを選びます。

こちらも期待値はCもDも損失9万円とかわりません。

しかし、Dは10%の確率で損失が0円になる可能性もあります。

90%の確率で損失が1万円より多くなるリスクがあるにも関わらず、です。

 

人がこのような行動を取る理論を「プロスペクト理論」と呼びます。

ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーによって1979年に発表された、比較的新しい理論です。

ちなみに、カーネマンはこの理論で2002年にノーベル経済学賞を受賞しているらしいです。(Wikipediaより)

 

プロスペクト理論とは簡単に言えば、「利益が出そうな時には最大限リスクを回避して利益を得ようとし、損失が出そうな時にはリスクを踏んででも最大限損失を回避しようとすること」です。

 

A:100%の確率で9万円を手に入れられる。

B:90%の確率で10万円を手に入れられる。

 →この問題では10%のリスクを回避して9万円を得ようとします。

 

C:100%の確率で9万円を損失する。

D:90%の確率で10万円を損失する

 →この問題では90%のリスクを踏んででも損失を0円にしようとします。

 

ギャンブル(特に負けている方)もこの理論で大分説明がつくところもあります。

 

もうお気づきの方もいらっしゃるでしょう。

そう、ポイントカードやメンバーズカードは、

「持っていると確実に得られる(と見せかけている)利益」であり、

「持っていないと確実にする(と見せかけている)損失」でもあるのです。

 だから私たちはポイントカードやメンバーズカードを無自覚に持たされてしまい、捨てられないのです。

 

結果として財布がパンパンになり、

財布から派生する自由な買い物というプライベートで主体的な営みの制限、

財布の重量化→バッグの重量化→体力の浪費→判断力の低下、

服装やバッグが財布ありきの自由でない選択、

カードの〇円以上お買い上げだと△△のような特典がゆえに本来不必要なものを半ば自動的に買ってしまう、

などの浸食を受けてしまうのです。

本来自分の生活を豊かにするための財布に入れているものが、逆に自分の主体性を奪ってしまっているのです。

 


財布から主体性を取り戻す方法

①知識の向上

②知識やルールによる行動

 のみです。

 

①知識の向上

そう難しいことではありません。

「お得になりますよ」と言われているその「お得」を客観的に計算するだけです。(客観的にが重要です)

 

例えば、

有効期限1年間の1%還元

1ポイント1円

1000ポイント単位で使用可

1回予算5000円の飲食店 で考えてみましょう。

一回の食事では50ポイント、1000ポイント貯めるためにはあと1年以内に19回行かないといけません。

1カ月は週休二日だと20日位働きます。

そんなにそのお店、行きますかね…?

あと19回行ったとして(拘束されたとして)、その恩恵は1000円引きで、4000円は払うんですよ?

本当に、お得なのですかね…?

1000ポイント(1000円)貯めるために、10万円必要って、本当にお得ですかね…?

お得はお得になりますが、本当にお得ですかね…?

いや、銀行の利率よりはいいかもしれませんが…

今一度、ちゃんと考えてみる必要はあると思いませんか?

 

②知識やルールによる行動

あまりにルールが多すぎると窮屈ですが、一つのラインが決まっていると人は合理的な判断をしやすくなります。

例えば、私は当オフィスを開設する際、「半年経って新卒位稼げないなら、きれいさっぱり止める」、というルールを作っていました。

プロスペクト理論の「損失」に関して、自分なりのルールを決めたことにより、最低限の損失ラインというのを決めたのです。

幸い何とかオフィスは維持できていますが、人は自分にとって都合のいい判断をしがちです。

予め、自分なりのルールや判断基準があると、物事を判断する主体性を自分に残すことができます。

 

知識を得たところで本当にそうなのかを考えた結果、自分のルール内での判断の結果、お得でないと判断したのであれば、あとは実行するだけです。

速やかにそのカードを断捨離し、違うお店を探したり、コスパのいいお店を開拓したり、インスピレーションで適当なお店に入ったりするだけで、また新しい出会いが生まれます。

 

ただそれだけの事ではありますが、思考は自由を取り戻しているともいえるでしょう。

そこには、人生の判断の主体性が自分にあることを実感できるものがあるでしょう。


カウンセリングという主体性を取り戻す営み

上述のことは、実は一部のカウンセリングのプロセスとそっくりなのです。

 

①無自覚に行っていることを知る

②そこから脱却していくために心と身体を調整し、新しい自分の考えや感じ方を構築する

 

自分は良かれ、ベストだと思ってやっていることでも、実際はそうでないことが多くあります。

そしてそのことで自分で自分の首を絞めてしまっている時も少なからずあります。

それをカウンセリングという形で振り返り、一つ一つ検討をしていくわけです。

そのプロセスは、ある意味財布に必要なカードを吟味するもの(自分の中核的な信念や想いを再確認するもの)とも言えますし、不要なカードを断捨離すること(いつの間にか変わってしまった想いや、報われなかった想いなどを再度整理すること)とも言えます。

 

カウンセリングの効果は受けないとわかりませんが、疑似的には財布を変えることによって小さく体感することができるかもしれません。

何かすっきりとした感じと、ちょっとの新しいワクワクと。

カウンセリングを全部終えた後に、そうなって頂ければ幸いです。

 

 

 

当オフィスでは、しっかりとしたカウンセリングをご提供しております。

イライラしたり生きづらさを感じている方。

不安や確執を抱えていらっしゃる方。

是非一度当オフィスへの扉をたたいてみてください。

それだけで何かが変わってくるかもしれません。

 

カウンセリングのお問い合わせ、ご予約はコチラのフォームからお願いいたします。

 

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