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思い込みの心理学 利用可能性ヒューリスティック

「利用可能性ヒューリスティック」

ちょっと聞きなれない単語かもしれません。

 

wikipediaによると

「想起しやすい事柄や事項を優先して評価しやすい意思決定プロセスのことをいう。

英語の訳語である検索容易性という言葉の示す通りのヒューリスティックである」ということですが…

 

ちょっとわかりにくいので、別の具体的な例でご説明いたします。

 

 

ロードバイク乗りはマナーが悪い?

実は私は晴れている日は自転車通勤をオフィスまでしています。

理由はいくつかありますが、非常に快適です。

そんな話をすると、以下のような話が良く出てきます。

 

「ピチピチのジャージってかっこ悪くない?」

「スピード出していて怖いよね」

「マナー悪いよね」

 

どこで話してもこういった展開になります。

概ね、歓迎されていないようです…(笑)

 

なぜだろう?と考えた結果、今回の「ヒューリスティック」の話になったのです。

 

確かに、残念なマナーのロードバイク乗りも見受けられます。

信号に突っ込んだり (多分、減速、停止、再加速をしたくなかったのでしょう)

車の後ろにビタビタに張り付いたり (多分、スリップストリームを使いたいのでしょうが、車が急ブレーキすると本当に危ないですよね)

コンビニ前を大勢のピチピチジャージで長時間談笑してたり (多分、練習か何かの前後で、チームか知り合いで、話に花が咲いているのでしょう)

無灯火で夜間全開ペダリングしている人もいたり (これは弁解の余地なしですね、本当に止めて欲しいです)

 

こんな話をすると、「ロードバイク乗り=マナーが悪い人たち」という結論になってしまいがちです。

ですが、今日は敢えていいましょう。

それは「違う」と。

それはヒューリスティックによる偏見の可能性があります。

 

 

正確な統計 vs 経験則(ヒューリスティック)

ロードバイク乗りが本当にマナー的に悪いかどうかを検討するためには、本当は以下の手続きが必要なのです。

(仮にの話ですので、細かいところは飛ばします)

①ママチャリ乗り、マウンテンバイク乗り、クロスバイク乗り、ロードバイク乗りの4つのカテゴリーに分類を行う。

②それぞれ100人位ずつ、年齢や性別、場所などをランダムに選択(もしくは定点観測)して、

③マナー的にOKか否かを明確なルールで可否をつけその実数を計測

④その結果、ロードバイク乗りが統計的に明らかにマナー違反が多ければ、初めてそこで「ロードバイク乗り=マナー的にダメな傾向がある」と言えます。

これが正確な統計学です。

 

では、実際の路面上ではどうでしょうか?

実際に「危なっ!」と私たちが感じるのは、ママチャリ乗りとロードバイク乗り、どちらが多いでしょうか?

私個人が1週間実際に計った統計ですと、圧倒的にママチャリ乗りです。

 

信号が赤だけど左右確認して渡ってしまう率…圧倒的にママチャリが上です

左右、前後確認なくスーパーやコンビニから出てくる率…圧倒的にママチャリが上です

進路を塞ぐ形で停車している…圧倒的にママチャリです

手信号等意思表示なく右左折・停車をする…ママチャリです

 

ではなぜ、ロードバイク乗りはこんなに嫌われてしまうのか?

誤った経験則によるものだと思います。

 

一例として、ロードバイクはスピードが出せるように設計されている自転車です。

ちょっと乗って漕げば、誰でも時速35kmなんてあっという間に超えます。

ところが、いわゆる原チャリは30km制限ですよね。

すると、「あんなにスピードをだして、あの自転車は危ない!」という意識に私たちはなります。

そして、実際にそういう場面を目にします。

当然です、ロードバイクにとっては普通のスピードですから。

 

その他にも上述のような一部のマナーの悪いロードバイクの現場を見たとしましょう。

すると「ああ、やっぱりロードバイク乗りは危ないんだ」と認識します。

しかもそのロードバイク乗りはなんだかピチピチのジャージを着ているので、ますます怪しいわけです。

その後、度々私たちはそのような光景を見ます。

自転車ブームも後押ししていることでしょう。

 

すると、いつの間にか「ロードバイク乗り=マナーの悪い集団」という、情報のショートカットを作ってしまい、経験則としての偏見を気づかずにもってしまうのです。

私たちの脳は高性能ですが、めんどくさがり屋です。

なるべく認知処理を簡易化したいというプログラムなのです。

思い出しやすい記憶情報のみを優先的に判断の根拠にします。

実際の統計よりも、印象の大きさで判断しがちです。

頻度や確率を水増しして思い出す時もあります。

 

これらの偏見を生じさせうるものが、利用可能性ヒューリスティックと呼ばれるものです。

 

 

「いつもそうだよね」は本当にそうですか?

私たちの脳は、上記のようにある意味都合のいい情報のショートカットで状況を判断しがちです。

それは便利なことでもあり、一方で疑うものでもあります。

「いつもあの人は遅刻してくるよね」という場合、10回中9回位遅刻してくれば、その表現は概ね正しいと言えます。

しかし、10回中3回位の遅刻ですと、「いつも」とは言いにくいものがあります。(遅刻していることに変わりはありませんが)

 

私たちの主観的な判断は、基本的には自らの判断にとって都合のいい情報のみを抽出しがちです。

そしてその都合のいい情報は、本当は事実とはかけ離れているものなのかもしれません。

あなたが考えている情報は、本当に正確なものでしょうか?

 

なお、これらを助長させていくものが「認知の歪み」と呼ばれるものですが(厳密に言うと今日の話もそうですが)、詳しくはまた別の機会にお話しいたします。

 

とはいえ、私たちは自分が主観的に事実と思っていることが真実であると思いがちです。

その(本当は違うけど)事実によって、自分が追い詰められていく時もあります。

カウンセリングはそういった時にも有効です。

自分が気が付かなくなっていることに対して第三者の視点から気づけたり、それによって追い詰められなくなったり(余力が生まれたり)することが期待されます。

 

追い詰められた時にこそ、一度カウンセリングを受けてみるのも非常に有効なことです。

 

 

 

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