当オフィスへのカウンセリングをお申し込みされる社会人の方で、そのきっかけとなる5本の指に入る理由の一つがハラスメントです。
特に昨今はパワハラに該当する事案が多く発生しているように見受けられます。
今回はハラスメントに関して考察をしていこうと思います。
ハラスメントとは
一言で表すのであれば、直訳は「嫌がらせ」ですが、実際は「人権侵害」と言った方がよいでしょう。
ハラスメントの定義が全て法的に確立しているわけではありませんが、
①本人や周囲が不快に思い、それを表明している
②にもかかわらず被害者が不利益を受ける可能性を盾にとり、行われている嫌がらせ(人権侵害)
と言えるでしょう。
現在は
セクハラ(セクシャルハラスメント:性的なハラスメント)
パワハラ(パワーハラスメント:職場の有利性でのハラスメント)
モラハラ(モラルハラスメント:精神的・情緒的な次元を通じて行われるハラスメント)
アルハラ(アルコールハラスメント:アルコール飲料に絡む嫌がらせ全般)
アカハラ(アカデミック・ハラスメント:研究教育の場における権力を利用したハラスメント、パワハラの学生版とも?)
など、様々なハラスメントが問題になっています。
インターネットで調べると、30種類くらいが出てきます(2016年10月現在)。
男女雇用均等法により、セクシャルハラスメントは法的に規定されていますが、他のハラスメントも本来同様に考えるべきものでしょう。
(免責)当オフィスは心理カウンセリングのオフィスですので、訴訟等お考えの場合は、そちらに強い法律事務所も検索してみてください。
企業におけるハラスメント対策
どんな形のハラスメントであれ、基本的には現状の法律になって規定されているのはセクハラですので、それに準じる形になるかとは思います。
逆に言えば、その対策をきちんととっているかどうかで、どういう企業なのかがわかる、とも言えます。
余談ですが、焦らず転職活動をしている方は、福利厚生の充実も大事ですが、相談窓口体制などを整備しているかどうか見た方が企業の姿勢がわかるかもしれません。
厚生労働大臣の指針により、事業主は雇用管理上講ずべき措置として以下の10項目が定められていて、事業規模によらず義務になっています。
なお、以下の項目はわかりやすくするために噛み砕いている表現ですので、あらかじめご承知ください。
1.事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
(1)職場のハラスメントはダメと周知・啓発すること
(2)ハラスメントをした者は厳正に対処する
2.体制の整備
(3)相談窓口をあらじめ定める
(4)窓口担当者が適切に対応できるように(事業者が)すること、(担当者が適切に)対応すること
3.ハラスメントへの迅速かつ適切な対応
(5)事実関係の迅速・正確な確認
(6)(事実の場合)被害者への配慮
(7)(事実の場合)行為者への措置
(8)再発防止(事実関係に関係なく)
4.上記とともにしなければならないこと
(9)プライバシー保護
(10)相談したこと、事実関係の確認に協力したことによる不利益な取り扱いをしてはならない旨と、周知・啓発
詳しくは厚生労働省のHPも参照されてください。
現在のハラスメントの問題点 ~私見を徒然に~
(1)教育の不全さ
学校教育では残念ながらハラスメントは扱いません。
そのため、何がハラスメントにあたるのか、ハラスメントをされたらどうすればいいのか、会社としてどうしていくのが必要なのか、など…
大事な教育が誰にもなされていないのが現状だと私的に感じております。
上級管理職(取締役クラス)も、中間管理職も、一般職も、ちゃんと教えられているのでしょうか?
企業内研修としてどの程度のことがされているのでしょうか?
大企業であったとしても、電通さんを見ている限りでは一概に言えるようでもなさそうです。
また、「昔は○○だった」ということで、昔のやり方を正当化しているような方も多く見受けられます。
時代は変わっているのです。
20年前は、やっとwindows95が出てきた位の時代です。
30年前は一人一台PCなんて考えられません。
しかし、22歳で入社した人は、30年たった今部長クラスでしょう。
昔のやり方を否定はしませんが、今の時代に即したやり方として考えていかなくてはならないと思います。
(2)行為者側の問題意識の希薄さ
しばしば聞きます。
「ちゃんとチェック、指導してましたよ!」
「相手が拒否しなかった」
「私にそのつもりはありませんでした」 など
ハラスメントは、基本的に行為者側に問題意識はありません。
パワハラの場合時に、良かれと思ってやっている時さえあります。
そして、さらにパワハラの場合、明らかに職位に差がありますので、揉み消すことも容易になります。
しかし、相手がハラスメントと言った場合、自分の立場はもろくも崩れ去ります。
ハラスメントをしていようと、していまいと、「自分の行動はハラスメントにあたるのかもしれない」というある種の危機意識が重要になります。
それはハラスメントを防止するだけでなく、不当にハラスメントと言われた場合に自分の身を守ることにもつながります。
このリスクマネジメントの意識を管理職が持っていないのも問題です。
一度訴訟問題になると、数千万、場合によっては億を超える金額が損害賠償として自分にふりかかります。
それは支払い能力とは関係ないところで裁判所に申し渡されるのです。
いずれにせよ、リスク管理=問題提起として自分でその感覚を常に張っているかどうかが分かれ目になるのでしょうが、残念ながら今の管理職はそうでないように思われます。
(3)上層部の判断と、被害者側の過度の強さと過度の弱さ
矛盾しているタイトルなのは重々承知ですが…
医師の診断書を持って、突然にうつなどの休職は始まります。
職場の周囲の人も驚くでしょう。
そして上層部は過不足なく判断をすることは、基本的には難しいです。
必ず、どちらかに偏る傾向があります。
それが強いか、弱いか、です。
被害者側が過度に強くなってしまう場合、上司側の一方的な管理責任問題として捉えられてしまいます。
被害者側が過度に弱くなってしまう場合、「まぁ、〇〇君にも問題はあったわけだから」と捉えられてしまいます。
この傾向は、特にセクハラ問題などで多く聞きます。
いずれにしても、上層部の判断は基本的にはバイアス(偏見)がかかってしまうのが問題です。
企業でできる対策
ずばり、教育とリスク管理です。
トップがハラスメントに危機意識を持ち、事業所内でのハラスメントはしないという明確なメッセージが必要です。
管理職には管理職の、一般職には一般職の職位に併せた教育研修が必要です。
管理職を管理職としてしっかりと育て、一般職は一般職として育てることが必要です。
しっかりとした相談体制と服務規程を作成し、事業場内から管理職・一般職共同でハラスメントを無くしていく風土が必要です。
別ページでは電通事件について述べていますが、企業にとってハラスメント対策は義務であり、リスク管理の時代です。
労働者にとってハラスメント対策は自己防衛であり、健全な働き方をするために知らなくてはならないことです。
学校で教えてくれない、企業で教えてくれないことにこそ、しっかりとした投資と知識で対応していかなくてはならない時代と言えるでしょう。
当オフィスでは、教育研修も承っています。(事業所単位)
大手さんはやり方が確立しているものですが、当オフィスの研修は事前リサーチなども含め、綿密にさせていただいております。
しっかりとした知識とグループワーク形式で体験的に学んでいきましょう。
もちろん、個別のカウンセリングでもこれらの知識と経験を活かして行っております。
ハラスメント研修にご興味のある方はお問い合わせください。