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メンタルヘルスや精神疾患に関する教育の必要性

日本は義務教育があります。

中学校までは(不登校になるかならないかは別として)、統計上かなりの数の方が教育を受けます。

ですが、その中でメンタルヘルスや精神科疾患に関する教育をする機会は(多分)ありません。

 

うつ病の生涯有病率は6.5%と言われています。

(生涯有病率とは、調査日までに診断基準を満たしたことがある人の割合です。)

 

ガンは生涯有病率はおおむね50%。(部位や性差などの話はここでは置いておきます)

2014年段階で、糖尿病は男性の15.5%、女性の9.8%。(地点有病率です)

2015年段階で、HIV感染者およびAIDS患者を合わせて1434件、つまり人口1億3000万として0.001%。

 

義務教育の性教育の段階でHIVやAIDSに関しての教育は多少行われているところもあるようですが、精神疾患は統計上明らかに多いはずなのに教育は行われません。

(生涯有病率と地点有病率の違いはもちろん承知しております)

 

統合失調症は、統計上は1%の発症率と言われています。

その昔の学校で考えますと、300人1学年だったと仮定したら、2~4名くらいは発症していてもおかしくないわけです。

自分の知っている旧友の誰かがなっていてもおかしくはないのです。

その中の一人に自分がなっていてもおかしくないわけです。

もっと言えば、これから認知症患者は増え、2025年には後期高齢者の5人に1人は認知症と呼ばれる時代があと8年後です。

 

日本の教育としても、そろそろ誰でも起きうることとして、メンタルヘルスや簡単な精神科疾患の教育を始めた方が良いのではないかと、個人的には思っております。

そして、「骨折」は何となくの理解が可能ですが、メンタルの話はもう少し客観的で正確な理解が必要なのではないかと思います。

 

 


社会と、風土と、教育と

これには日本の風土も少なからず関係しているのではないかと、個人的には考えております。

たとえばアメリカですが、「床屋とカウンセリングルームの数は同じくらい」という言葉が(実際に本当かどうかはわかりませんが)あります。

これは、「第三者に相談をする」「カウンセリングを受ける」という文化が、私たち日本人の「髪を切りに行く」というのと同じくらいのハードルであるということがイメージとして言えるかと思います。

もっとも、アメリカの臨床心理士は薬を出すことも法律上許されておりますので、単純比較は難しいですが…

 

一方、日本ですが、あまり第三者に相談をするということ自体が奨励されていないように感じております。

ちょっとした悩みなどは自己解決するのが当たり前。

不安・緊張などは本人の気合いの問題。

誰かに話すとしても、家族・友人だけ。

労働基準監督署なんてもっての他(もしくは退職時にチクるところ)

といったところでしょうか?

一昔前はうつ病の市民権もなく(うつの市民権についてはまた別の機会に考察いたします)、実際にうつ症状に苦しんでいる方は周囲の理解を得るのが大変だった(というか、困難だった)日本の風土と思われます。

 

今は、うつ病というものが知られることにより多少の改善はしたかもしれませんね。

ただ、正確な理解かは別問題のようには感じますが…

それでも前進ではあります。

 


社会人後の教育

現在の高校進学率は9割以上。

大学進学率は約6割。

専門学校なども含めると、中卒・高卒で働くことが大分少なくなってきています。

 

一方で、大学(ひいては大学院)を卒業した人のメンタルヘルスや精神科的知識は最低限の水準なのでしょうか?

 

こちらの記事でも触れていますが、電通事件は最低限の働くリテラシーがあったとは思えません。

さらには36協定、ハラスメント、健康診断の法的基準など、メンタルヘルスや精神科疾患に密接にかかわるような事項も、どちらかと言えば社会人になって現場たたき上げで得ていくもののような気がします。

(少なくとも私はそうでした)

一般職→管理職となる時に初めて体系的に学んだような気がします。

つまり、卒後の教育は企業に依存していると言えます。

例えば、管理職研修一つを受けさせるかどうかも企業と上役の方針で決まってしまいます。

優れたフィールドプレイヤーがその感覚で職位につくこともザラです。

しかし、フィールドプレイとマネジメントは全く違うものです。

企業の体質や職位という名目で、平然とメンタルヘルスを損なう行為が行われたり、精神科疾患に対して十分な対応がなされないこともままあるわけです。

 

明らかにうつ状態であったにも関わらず、本人はもちろん、周りの方も気づけなかったとも言えます。

 

何が悪いという議論はここではしませんが、少なくとも本人や周りにもう少し「知識」があると少しでも変わったこともあったのかなぁ…などと思ってしまいます。

 

どういう状況が医療機関が必要なのか。

どういった相談窓口があるのか。

最低限はこの辺りでしょうか?

 

 

 


まとめ

最低限の知識を得て、自分で身を守れたり、社会的な偏見を改善したりすることも義務教育の一つの役割ではないかと思います。

 

選挙の仕組みの勉強も大事です。

国会の成り立ちも大事です。

同じくらい、メンタルヘルスについても一度でいいので学ぶ機会があるといいなぁと思ってしまいます。

 

二次関数のグラフや、サイン・コサイン・タンジェント、ありおりはべりいまそかり、などの知識は少なくとも私は日常使っていませんが、メンタルヘルスや精神疾患に関する知識は、自分であれ、他者であれ、きっと一生に一度は使うものではないかと思っています。

 

腫れ物に触る(というか触らない)のではなく、人の苦しさを理解できる、そんな社会になっていけるといいですよね。

 

なお、当オフィスでは、メンタルヘルスの研修も承っています。

B to Bでも、個人コンサルテーションでも相談可です。

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