ここ数年で「うつ」というのも広く知られるようになりました。
いわゆる「うつ」というのは、気分が落ち込む、意欲がわかない、億劫になる、将来を悲観する、眠れないなど、気分が落ち込む及びそれに由来する症状(例えば食欲がない等)が現れてくることが多いです。
「うつ」と言っても、古典的には内因性(脳の器質的な問題)、外因性(交通事故などによる脳の損傷)、心因性(いわゆる、メンタルの問題)と、大きく三つの要因があります。
内因性や外因性は服薬によって改善することが多く見受けられます。
ちなみに、躁うつというのは、明らかにテンションが高く、とにかく過活動、普通だったらやらないようなこともやってしまうといった、「うつ」とは真逆の症状になります。
なぜ同じ気分障害に分類されているかというと、躁うつの後には遅かれ早かれ「うつ」がやってくるからです。
テンション高く、それだけ日々の活動にエネルギーを使ってしまうと、人間のエネルギーには限りがありますから、あとで(数週間~数か月後に)ぐったりとしてしまう、というわけです。
もっとも、躁うつがひどい時には、時に統合失調症と見分けがつかないくらいの時はあります。
さて、うつになぜカウンセリングが必要か、という話ですが。
躁うつの場合は、まずは薬物療法が必要になります。
なぜなら、自分でも止められないような状態になっているからです。
明らかにテンションが高い時に行うカウンセリングでは、十分な効果が見込めません。
しかし、うつには(特に心因性の場合)カウンセリングが有効なことが多いと言えます。
躁うつの後も、予防的な意味でのカウンセリングはやはり有効なことが多いと言えます。
うつのカウンセリングと治療のゴール
そもそも「うつ」と呼ばれる感情は、人間が持っているごく自然な感情の一つです。
例えば親しい人(家族や恋人)と別れることになった。
例えば長年勤めた会社を定年退職にて終えてやることがなくなってしまった。など…
これらの感情は時間と共にある程度は緩和されます。
「うつ」の感情の背景にある「悲しみ」「喪失感」といったのを乗り越えていけるからです(これをワークスルーと呼びます)。
しかし、いわゆるうつの方には特有のネガティブな思考(認知の歪みと呼ばれるもの)をお持ちの方も多く見受けられます。
それによって、本来ワークスルーできるものがうまくできなかったり、見て見ぬふりをしたりとしてしまうのです。
結果として、何年薬を飲んでも治らないうつ、薬だけが増えていくうつ、という状態像になってしまうことが往々にしてよく見受けられます。
自分のことではわかりにくいかもしれませんが、他の方を見ていると「何でこの人そこまで考えるんだろう?」と思う時がないでしょうか?
まさにそれです。
考え方、捉え方から、自分自身で知らぬうちに「うつ」になってしまうことが多くあるのです。
また、疾病利得という概念もあります。
「うつ」になっていることが、本人も全く知らぬうちにいつの間にか「得」になってしまうということです。
信じられないかもしれませんが、現実によく起きています。
例えば、会社で自分の責任で何か失敗した→取れる形での責任と、受け止めていき、また次の仕事を頑張っていくというのが通常の流れになりますが、失敗したという「心の痛み」に耐え切れない場合、うつ状態になっていることによってその「心の痛み」を受けなくていいという形になっているケースは、比較的よく見受けられるケースです。
(もちろん、全てではありません。一例ですので念のため)
このような自然としてしまう考え方、捉え方、疾病利得というのは、自分一人では解決していくことはほぼ困難です。
自分の無意識に選択されるベストな方法であり、長年その方法で結果的にメリットがもたらされている方法だからです。
そういった方にこそ、プロのカウンセリングが必要と言えます。
じっくりと心に向き合い、うつの元となった思考や感じ方に気づき、等身大の感情をありのままに背負っていけることが必要になります。
うつがキレイさっぱりなくなるのではなく、うつをうつとして持っていけることが治療のゴールになります。
また不必要にうつを生み出すものと決別できることも必要です。
そのプロセスなくして健全なメンタルを取り戻していくことは難しいと言えます。
なお、ここ最近認知行動療法と呼ばれる技法がうつには有効という情報が知られるようになっています。
これは、上述のようなプロセスをたどりやすい「パッケージ技法」だからと言えます。
有効な方には大変有効ですので、当オフィスで必要そう、もしくは効果が見込めそうな方へはお勧めをさせてはいただいております。
ですが、現実問題、今の日本には「カウンセリングに行く」という文化がないため、こういった自分と薬だけでは改善できない方が多くいるにも関わらず、必要な治療が行われていないというのが現状です。
ぜひ、当ホームページをご覧になったご本人やご家族、周囲の親しい方は、治療の一つとしてのカウンセリングというのを検討してみませんか?
まずは、一歩、今までと違うことをしてみることが必要かもしれません。
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平成29年12月12日 加筆修正