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大人の発達障害|治療法と解決法

対人関係がうまくいかない20代女性

大卒までは勉学は優秀だが、対人関係はあまり得意でなかったBさん。

大卒後はSEとして就職しています。

最初は一人で黙々とプログラミングをする作業が楽しかったのですが、この度小さなプロジェクトのリーダーに指名され“対外折衝”が増えると、対人関係がうまく築けず、あちこちでトラブルを起こしてしまいました。

結果としてプロジェクトのリーダーは別の人に変わることになりましたが、Bさんとしては一生懸命やっていたのに、なぜかうまくいかず、怒られて終わった、理解ができない状況です。

 

考察・対応

こういったお話は実は多く聞きます。

この時に問題となるのは、「何故対人関係がうまくいかないのか」です。

単純に相手の問題(威圧的・高圧的な人)の時もあれば、会社の問題(風通しが悪い)、自分の問題(不安・緊張が高い)など、色々な要因がありえます。

まずはこれらを明らかにする必要があります。

原因が明確であれば、対処をすることができます。

 

ところが、「自分で問題ではないと思っているけど、周囲から見ると問題」という場合があります。

中でも最近多いのが、メディア等でも取り上げられるようになってきた「大人の発達障害(自閉症スペクトラム障害)」と呼ばれるものです。

(本来、「発達障害」という単語と「自閉症スペクトラム障害」という単語はイコールではないのですが、ここではその話は置いておきましょう。)

 

自閉症スペクトラム障害とは、以下のA,B,C,Dを満たしていることと定義されます。

A:社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害(以下の3点で示される) 

①社会的・情緒的な相互関係の障害。

②他者との交流に用いられる非言語的コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)の障害。

③年齢相応の対人関係性の発達や維持の障害。

B:限定された反復する様式の行動、興味、活動(以下の2点以上の特徴で示される) 

①常同的で反復的な運動動作や物体の使用、あるいは話し方。

②同一性へのこだわり、日常動作への融通の効かない執着、言語・非言語上の儀式的な行動パターン。

③集中度・焦点づけが異常に強くて限定的であり、固定された興味がある。

④感覚入力に対する敏感性あるいは鈍感性、あるいは感覚に関する環境に対する普通以上の関心。

C:症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になって明らかになるものもある。

D:症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている。

 

上記基準で考えると明らかに該当はするものの、特に保育園・幼稚園~学生時代まで特に何も指摘をされずに育ち、社会人になってうまくいかなくなる、という方も近年いらっしゃいます。

昔(四半世紀ほど前)は自閉症スペクトラム障害という発想がなかったため、逆説的に診断も付かず、当時の専門職にも見過ごされてしまった可能性もあります。

限りなくホワイトに近いグレーゾーンで見過ごされてしまった可能性もあります。

いずれの場合も、本人や周囲の人も「何かうまくいかない」という認識はあるのですが、結局誰もが不愉快な思いをして終わってしまうというパターンが多いようです。

なお、この特徴が故に、いじめやそれによるうつなどの2次的なメンタルヘルスの問題も発生している可能性もあります。

 

もし自閉症スペクトラム障害であった場合、得意・不得意や環境等も考えながら差しあたっては「理解」と「対応」を作ることが必要になります。

そこにおいてはカウンセリングは大変有効になります。

心理療法という側面だけでは自閉症スペクトラム障害を治すことは難しいですが(脳機能の疾患のため)、生きづらさを理解しつつ、どのようにすればよいかの具体的行動を模索していくカウンセリングになります。

なお、これはそもそも自分で気づけないことが多いため、お一人では無理な作業です。

そして、お一人お一人その傾向は異なるため、オーダーメイドでの作業になります。

 

専門家とともに、少しでも生きやすい方法を確立していくことが、急がば回れの治療といえるでしょう。