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パワハラ|気づかない上司・辞める部下

ハラスメントに気づけない上司

40代 男性

上司に怒られてうつっぽいというお話でお会いしてみると、実はその上司に問題がある、というケースもあります。

優秀なプレイヤーでもある上司Cさんは、マネージャーとしても部下に対して同じことを求めています。

自分のノウハウを伝え、それでもできない場合は叱咤激励し、面倒見もいい、「さすがですね」といわれるような上司で、ここだけみると非常に良い上司です。

しかし、部下に対してのハードルが余りに高すぎ、誰もそれを達成できずにいました。

毎回設定される難しい要求に部下たちは疲れきっている、そういう状況でした。

 

理解・対応

単純に見れば上司の部下に対する「目標の設定ミス」とも見えます。

また、上司としての管理能力やスキルが充分ではないとも言えます。

ですが、一応の可能性として、上司のパーソナリティの問題を考えてみてもいいのかもしれません。

 

優秀なプレイヤーは、プレイヤーの上司が気にっている限りにおいては、比較的昇進しやすいものです。

しかし、プレイングマネージャーとしての管理には多くの心理的な問題点が立ちはだかります。

例えば、優秀なプレイヤーであるが故に、管理している部として目標を達成するために、個々人の能力を多少なりとも無理して達成できるレベルに設定することもあります。

これは、マネージャーとしての自分が結果を出すため、とも言えるわけです。

こういった自分が賞賛されたいといった欲求は誰しもが持っているものですが、それが行きすぎると自己愛性パーソナリティ障害と呼ばれるものの可能性もあります。

結果的に自分の部署の目標は達成されないばかりか、人がいつかず、いつも採用活動をしたり、指導したりしますが、結局辞めてしまうため無駄に終わってしまいます。

 

自己愛性パーソナリティ障害

誇大性(空想、または行動における)、賞賛されたいという欲求、共感の欠如の広範な様式で、成人期早期に始まり、種々の状況で明らかになります。

次のうち5つ(またはそれ以上)によって示されます。

①自己の重要性に関する誇大な感覚(例:業績や才能を誇張する、十分な業績がないにもかかわらず優れていると認められることを期待します)。

②限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれています。

③自分が特別であり、独特であり、ほかの特別なまたは地位の高い人達に(または施設で)しか理解されない、または関係があるべきだ、と信じています。

④過剰な賞賛を求めます。

⑤特権意識、つまり特別有利な取り計らい、または自分の期待に自動的に従うことを理由なく期待します。

⑥対人関係で相手を不当に利用します。つまり自分自身の目的を達成するために他人を利用します。

⑦共感の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしないです。

⑧しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込みます。

⑨尊大で倣慢な行動または態度。

 

そして、一番の問題は、このことに自分自身が全く気づいていません。

むしろ「自分は一生懸命やっている、そんな私に何を言っているんだ?」、位に思っています。

パワハラやモラハラをしている方に多い(診断基準を満たすかは別として)傾向と考えられます。

 

対応を考えるのであれば、まずはハラスメントを受けた方のケアと、上級管理職からの指導、必要に応じて研修等への参加が必要です。

それでも改善しないようであれば、組織として降格等も考えざるを得ないといえます。

「自分に問題があるのかもしれない…」とどこかで思っていただくことが、まずは第一です。

本人が「自分に問題があるのかも…?」と思っている節があれば、カウンセリングも有効です。

誇大性、賞賛されたい欲求、共感の欠如など、これらは全て“特別な”自分でありたいが故です。

逆に、「自分が普通である」、もっというなら「出来ないこともある」という考えを持っていられない、とも言えます。

ここにカウンセリングの有効性があります。

「清濁併せ飲む」ことが自己愛性パーソナリティのカウンセリングのゴールとなりますが、本来持っていなくない「濁」を一緒に持っていくことが必要な面接になります。

なお、「自分は間違っていない」と思ってらっしゃる方は、カウンセリングをしても大して効きませんし、そもそもカウンセリングにもいらっしゃらないでしょう。